台湾はグルメ愛好家にとって魅力の尽きない場所です。家族代々の味を受け継ぐ老舗から、にぎやかな夜市の屋台まで、ストリートフードはお手頃で気軽に楽しめるだけでなく、台湾の歴史の中で多様な文化に影響を受けながら育まれてきた奥行も感じられます。
熱々の牛肉麺や、具材たっぷりの刈包(グアバオ:台湾式ハンバーガー)など、台湾のストリートフードは実に多彩です。どの一品にも、台湾の人々が食に注いできた情熱とこだわりが感じられます。以下に紹介する10種類のストリートフードは、おいしさと人情味を兼ね備え、台湾の日常の温かさと風情を伝えてくれる存在です。
1. 牛肉麺(ニュウロウミェン)
牛肉麺は台湾グルメを代表するストリートフードの一つであり、その歴史は1950年代にさかのぼります。戦後、アメリカの対外援助によって持ち込まれた小麦粉と牛肉の缶詰に、各地から台湾へ渡ってきた人々が伝えた煮込みや製麺の技術と故郷の味が重なり合い、牛肉麺は台湾全土へと広まりました。その後、台北牛肉麺フェスティバルをはじめとする普及活動の影響もあり、牛肉麺は台湾を代表するストリートフードとしての地位を確立してきました。
牛肉麺の魅力はその味わいの幅広さにあります。油、塩、スパイシー、薬膳など、多彩なバリエーションのスープに、牛肉の部位や麺の種類といった具材まで、独自のレシピや食材選びの秘訣があります。いずれの店も、その個性によって熱心なファンを獲得しています。例えば、新北市中和区にある「蔡家牛肉麺 (Tsai Chia Beef Noodles)」は、塩で煮込んだあっさりした スープと厚切りの台湾産牛肩バラ肉で知られる人気店。コシのある麺と澄んだスープの組合せが評判を呼び行列のできる大人気店となりました。「江牛樓(Kou Gyu Rou)」 は、かつてラーメン店を営んでいた日本人シェフが手がける店です。昆布仕込みの澄んだ牛骨醬油スープに、カホクザンショウを効かせ、口の中でとろける牛すね肉の煮込みと組み合わせた1一杯は、台湾牛肉麺の魅力を新たな次元へ引き上げました。
ミシュランガイドがおすすめする他のレストランで牛肉麺を楽しむ:九添福牛肉麺館(Jiu Tian Fu)、可口牛肉麺(Ke Kou Beef Noodles)、老山東牛肉家常麺店(Lao Shan Dong Homemade Noodles)、清真中国牛肉麺食館(大安)(Halal Chinese Beef Noodles (Da'an))、穆記牛肉麺(Muji Beef Noodles)、天下三絶(Tien Hsia San Chueh)
2. 魯肉飯(ルーローハン)
魯肉飯(南部では肉燥飯とも呼ばれます)は、一見素朴ながら、台湾の日常を象徴する料理です。一般的には、皮付きの豚バラ肉を角切りにするか、豚ひき肉を使い、エシャロットやニンニク、醤油、氷砂糖などと一緒に炒めます。弱火でじっくりと煮込み、味を染みこませた煮汁は、濃厚で風味豊か。それを、もっちりとした粒立ちのよい白米にかけ、煮卵や半熟の目玉焼きを添えれば、台湾の人々に長く親しまれてきた家庭の味のできあがりです。
魯肉飯は、地域の個性がはっきり表れる料理 でもあります。たとえば、「禾日香(民族路)(He Jih Hsiang (Minzu Road)) 」では、手切りした新鮮な豚肉を10時間煮込んだ肉そぼろを使用し、ゼラチン質の豊かなコクと食感が特徴です。高雄の「前金肉燥飯 (Cianjin Braised Pork Rice)」は、仕上げに魚のでんぶをふりかけることで、風味により一層の奥行きを加えています。
ミシュランガイドがおすすめする他のレストランで魯肉飯を楽しむ:小王煮瓜(Wang's Broth)、柏弘肉燥(Bo Home)、今大魯肉飯(Chin Ta Lu Rou Fan)、橋仔頭黄家肉燥飯(橋頭)(Ciao Zai Tou Huang's Braised Pork Rice (Ciaotou))、大碗公當歸羊肉(Da One Gone Lamb)、店小二(大同北路)(Dian Xiao Er (Datong North Road))、光興腿庫(Guang Xing Pork Knuckle)、弘記肉燥飯舗(Hung Chi Rice Shop)、黄記魯肉飯(Huang Chi Lu Rou Fan)、賴岡山羊肉(Lai Kang Shan)、夜間部爌肉飯(Night School Braised Pork Rice)
3. タピオカミルクティー
タピオカミルクティーは1980年代に台湾で誕生し、瞬く間に世界中で大流行しました。現在の台湾では、街中に専門店が立ち並び、カップを手にした人の姿を多く見かけます。もちもちとしたタピオカと濃厚なミルクティーの組み合わせは、喉の渇きを潤すだけでなく、しっかりとした満足感も与えてくれます。その背景には、台湾に根づくお茶文化があります。烏龍茶を中心に、200年以上にわたってお茶が日常の中で楽しまれてきました。金萱、四季春、鉄観音などの茶種をはじめ、文山包種、凍頂烏龍、東方美人などの銘茶は、国際的にも高く評価されます。こうした茶文化は日常の飲み物にも受け継がれ、お茶の種類からトッピング、甘さや氷の量まで、細かく選べるカスタマイズ文化が、多彩なバリエーションと楽しみ方を生み出しています。
4. 蚵仔煎(オアチェン:牡蠣オムレツ)
蚵仔煎(オアチェン:牡蠣オムレツ)に似た料理は、閩南(福建省南部)や潮汕地区、シンガポール、マレーシアなどにも見られます。現地では、牡蠣と卵を炒めたものや、牡蠣をシンプルに焼き上げた料理が一般的です。しかし一方で、台湾の蚵仔煎は、さつまいもでんぷんを使った生地による独特の食感が大きな特徴。新鮮でふっくらとした牡蠣に、なめらかな生地、卵や野菜を合わせ、両面を黄金色になるまで香ばしく焼き上げ、塩味と甘味が絶妙に混ざり合うソースをかけて仕上げます。
寧夏夜市で60年にわたり店を構える「圓環邊蚵仔煎(Yuan Huan Pien Oyster Egg Omelette)」は、古くから台北の人々に親しまれてきた一軒です。南部直送のふっくらとした牡蠣と特製ソース、そして手際よく仕上げるスタイルは今も変わらず、地元の客から観光客まで、その人気の高さがうかがえます。
5. 鹽酥鷄(イエンスージー:台湾唐揚げ)、鷄排(ジーパイ:台湾風フライドチキン)
鹽酥鷄と鷄排は、台湾の揚げ物文化を代表する存在です。夜食として親しまれるだけでなく、球技観戦、親戚や友人との集まりなど、様々な場面で登場します。口いっぱいに広がるサクサクとした香ばしさ魅力です。どちらも鶏むね肉を漬け込んだ後、さつまいもでんぷんをまぶして揚げ、揚げニンニクや台湾バジル、塩コショウで味付けしたものです。香りが食欲をそそり、高カロリーで罪深い食べ物だとわかっていても、一口また一口と食べ進めて しまいます。
6. 刈包(グアバオ:台湾式ハンバーガー)
刈包は蒸した白い生地に具材を挟んだソウルフード で、その形は虎が口を開けて豚肉をくわえているように見えることから、「虎咬豚(虎が豚を咬む)」とも呼ばれています。忘年会などの年末の宴会で出される縁起物の食べ物であり、幸運に咬みつくことでお金がどんどん貯まることを意味しています。蒸してふんわりとした白い生地に、柔らかく味の染み込んだ豚の煮込み肉を挟み、酸菜やパクチー、砂糖入りピーナツパウダーを添えるのが定番です。塩味と甘味が絡み合い、子供からお年寄りにまで愛されています。刈包は福建省にルーツを持ちますが、台湾で独自の進化を遂げ、さまざまなバリエーションが生まれました。最も親しまれているのは、脂身と赤身の割合が異なる豚の角煮に四神湯(薬膳スープ)を合わせたものです。また、新竹市「非常好吃素刈包(Very Good Vegan Gua Bao)」の刈包は、煮込んだ麺腸(小麦で作られたモツの代用品)や、しいたけなどが包まれており、薬膳の上品な味わいが楽しめます。
ミシュランガイドがおすすめする他のレストランで刈包を楽しむ:春蘭割包(Chun Lan Gua Bao)、一甲子餐飲(Yi Jia Zi)、源芳刈包(Yuan Fang Guabao)、海口刈包(Yuan Fang Guabao)
7. 臭豆腐(チョウドウフ)
独特のにおいで知られる臭豆腐。一度味わえば忘れられない魅力があるともいわれ、台湾の街中でも好みは分かれつつ、多くの人々に愛されてきました。その香りを、夜市が本物かどうかを見極める目安にしている人も少なくありません。
起源については諸説ありますが、17世紀に誕生したと考えられています。戦後、台湾に移住した人々によって揚げ臭豆腐が持ち込まれました。現在では、鍋に入れる「臭臭鍋(臭豆腐とホルモンを使った鍋)」や、麻辣臭豆腐(スパイシー臭豆腐)、蒸し臭豆腐、炭焼き臭豆腐など、台湾各地で独自の食べ方が見られます
夜市では、揚げ臭豆腐が最も一般的です。甘酸っぱく食欲をそそる台湾キムチとおろしニンニクペーストを添えて提供されることが多く、外はカリカリ、中はフワフワの香ばしくてジューシーな一品です。多くの店では、香辛料を炒めたスープに、アヒルの血や大腸などの具材を加えたスパイシーで香り高い味わいの麻辣臭豆腐も販売しています。においは独特ですが、試してみれば、想像を覆す驚きの味わいを発見することができるでしょう。
8. 潤餅(ルンビン:台湾式春巻き)、ピーナッツクレープアイス
台湾は中国南部の閩南(びんなん)地域と同様に、清明節(祖先を供養する春の節句)に潤餅を食べる習慣があります。今では、祝日の枠を超え、一年を通して市場や夜市でその姿を見ることができます。セミの羽のように薄い皮で、もやし、豆腐干、キャベツ、豚肉の紅麹揚げ、ビーナツパウダーなどのさまざまな具材を包みこむ。 店ごとに好みや工夫を凝らした組み合わせが楽しまれています。例えば「吾旺再季(Wu Wang Tsai Chi)」では、スペアリブの唐揚げ とカレー味の切り干し大根を加えて、香りや味わいに変化を持たせています。
もう一つのバリエーションは、ピーナツクレープアイスです。台湾北東部の宜蘭で誕生したこの郷土グルメは、潤餅の皮で削りたてのピーナッツキャンディーと伝統的なタロイモアイスを巻き、パクチーで風味を添えています。ひんやりと冷たく、さっぱりしており、塩味と甘味、冷たさと温かさが絶妙に調和した、味わい豊かな一品です。
9. 蛋餅(ダンビン:台湾式クレープ)、葱油餅(ツォンヨゥビン :葱入り台湾風クレープ)
台湾の朝食文化において、蛋餅と葱油餅は欠かせない存在で、深く結びついています。葱餅油は山東省に起源をもち、1949年以降、北方からの移民が故郷の粉食文化を持ち込んだことで、米食が主流だった台湾の食文化に、北方由来の粉物が多く加わりました。物資が限られていた時代には、葱油餅に卵を加えるだけでも十分な栄養源となり、次第に蛋餅の原型が形づくられていったと考えられています。さらに、柔らかくもっちりとした食感を好む台湾の人々は、小麦粉にさつまいもでんぷんや片栗粉を加えた生地を工夫し、蛋餅が作られるようになりました 。手早く調理できる蛋餅は、 日常の朝食として定着しました。時代とともに進化を遂げ、現在ではハム、ツナ、チーズ、コーンなど、多彩な具材が使われるようになっています。
ビブグルマン「軟食力 Soft Power」では、蛋餅の生地を黄金色に焼き上げます。独特のサクサクとした食感に仕上げ、さらに五香粉(5種類のミックススパイス)を効かせた豆腐乳唐揚げなどの独自の味付けを包み込むことによって、何度食べても飽きのこない味わいとなっています(トップ画像©軟食力 Soft Power)。
公館夜市の「雄記葱抓餅(Hsiung Chi Scallion Pancake)」は、店主がフライ返しで軽く叩いて葱油餅をほぐして層をはっきりさせることにより、外はカリカリ、中はふんわりとした食感になっています。そこにコーンや台湾バジルなどの具材をのせ、ハニーマスタードソースを合わせた、独特の味わいも特徴です。
10. かき氷、豆花
かき氷と豆花は台湾で最も人気のある夏のデザートです。暑さを和らげて体温を下げるだけでなく、どこか懐かしさを感じさせる味わいでもあります。どちらも、あずきや緑豆、タピオカ、芋圓(芋団子)など、さまざまなトッピングと組み合わせて楽しむのが一般的です。最後に特製のシロップをかけることで、ほどよい甘さに仕上がります。台南で三代続く「八寶彬圓仔惠(國華街)(Yuan Zai Hui (Guohua Street))」 は、手作りの湯圓(タンユエン:もち米の粉で作る団子)と10種類以上のトッピングで知られています。
一方、永和にある「阿爸の芋圓(A-ba's Taro Ball)」は、タロイモを使ったデザートで知られ、なめらかなタロイモペーストは、かき氷や豆花ともよく合います。口当たりなめらかなタロイモペーストとさっぱりとしたサトウキビ氷のマッチングは、芋圓と見事に調和しており、暑さを吹き飛ばすのに最適です。